このページの本文へ
ここから本文です
2005/03/29

(梅森 浩一=アップダウンサイジング ジャパン 代表)

「『クビ!』論。」で、自らのリストラ経験を書いてからというもの、ビジネスパーソンの方々とお会いするたびによくこう聞かれます——「一体、どうしたら『クビ』にならずにすみますか?」。

そんなとき、私はまずこう答えるようにしています。

「仕事を効率よくこなし、パフォーマンスを上げることです。それに尽きます」。

もちろん、話はここで終わるわけではありません。クビにならない“パフォーマンス(業績結果)”を一体どうやったら上げることができるのか、が次の問題となってきます。

会社勤め時代を振り返ってみると、私には「仕事がうまくいったときには存在して、うまくいかなかったときには存在しなかった」人がいたことに気がつきました。それは“チャンピオン”と呼ばれる人たちです。

“チャンピオン”って何?

このチャンピオン…ひとことで言ってしまえば、「あなたの仕事を認め、あなたをサポートしてくれる人」という意味です。欧米では、ビジネスの会話でよく使われる言葉です。あなたがキャリアで悩んでいるときに、そっと手を差し伸べてくれる人であり、またあるときは、自分だけでなく周囲の人たちにも頼んで、一緒に手を差し出してくれる人。そんな頼りになる、心優しい人たちのことです。

私の例で言えば、30歳で外資系企業に転職して以降、激しい競争の中、35歳の若さで人事部長になれたのも、合併やクビ切りという厳しい仕事をやりとげられたのも、そのときどきにチャンピオンとなってくれる人がいたからこそです。

私が最初に100%外資系の会社に入社したのは1988年のことです。その後、かれこれ15〜6年がたとうとしています。日本人が、ここ日本において、「日本じゃない」環境で仕事をしたわけです。その間、私は多くのことを経験し、学びました。その中には、「これはイイ。なんでみんな、もっと早く気が付かないのだろう」ということもたくさん経験しました。

実は、このチャンピオンという存在も、みんなに早く伝えたいことの一つなのです。いや、最も早くお伝えしなければならないものとも言えます。このことを知っていると知らないとでは、皆さんの人生が大きく変わる可能性があるからです。

チャンピオンを辞書で引くと

チャンピオン。この言葉を聞いて、私たちが真っ先に思い浮かべるのは「優勝者」でしょう。言うまでもなく、この場合の優勝者は、「スポーツにおける、いちばん上位の勝者」を意味します。

例えば、ボクシングのチャンピオンがそうです。また、毎年1月の最終日曜日に行われるアメリカ最大のスポーツ・イベント「スーパーボール」での勝者は、アメリカンフットボールのチャンピオンです。野球のワールドシリーズは、その年のメジャーリーグのチャンピオンを決める試合です。

ところが、このように日常的に使われ、私たちにとって馴染みの深いチャンピオンという言葉には、実はもう一つ大事な意味があるのです。それは、(人・主義・主張の)「擁護者、代弁者、戦士、闘士、勇者」(小学館プログレッシブ英和辞典より)というものです。

後者の意味で使われるチャンピオンにまつわるエピソードを一つご紹介しましょう。それはアメリカ・カルフォルニア州知事選での出来事です。候補者のアーノルド・シュワルツェネッガー氏の過去のセクハラ疑惑が浮上。彼がどう反論するのか、選挙民の注目を集めていました。彼は、アッサリとその事実を認め、こうみんなに誓ったのです。

「自分は確かに間違いを犯した。これからは、女性の『チャンピオン』として一生懸命働きたいと思う」。

そのとき、日本のテレビでは、「チャンピオン」は「チャンピオン」のまま、カタカナのテロップ(サブタイトル)が流されました。そのテレビ番組を見た人も多いでしょう。ご覧になった瞬間、「?」と疑問に思われたのではないでしょうか。「なぜシュワちゃんが、わざわざ『チャンピオン』と言ったのだろうか?」と、奇異に思われた人もいたでしょう。

そのときの彼は、自分はこれから「女性の擁護者となる」と話した、というのが本当のところなのです。このチャンピオンという言葉の意味を知らない多くの日本人はそのとき、彼の真意を正しく理解することができなかったわけです…。

ビジネス上のチャンピオンはこういう人

言うまでもなく、現実のビジネスの世界は組織やチームで動いています。自分一人だけでできることなど、タカが知れています。何かしようとしたときに、あなたを「応援」してくれたり「支持」してくれる人の存在はとても重要です。こうした人をアメリカ人は、ビジネスにおける「チャンピオン」と呼ぶのです。

例えば社内で何か新規プロジェクトを立ち上げるような場合に、あなたのアイディアなり活動なりを「支持してくれる人」のことを指したりします。その人は、ただ単にアイディアを売り込むのを手伝ってくれるだけでなく、実行に当たって必要となる様々なリソース(ヒト、モノ、カネ)を調達する手助けをしてくれたりもします。また、あなたを応援してくれそうな他部署との調整を、自ら買って出てくれもします。

チャンピオンを探そう!

ここまでチャンピオンの話を読んでいただいた方の中には、

「そういえば、上司や先輩にそういう人がいたかもしれないなぁ…」。

そう振り返った方も多いのではないでしょうか。ならば、逆にこう考えることはできませんか。

「私を助けてくれるような上司や先輩を見つければ、仕事はうまくいく!」。

そうなんです。当たり前のような話ですが、これは真実です。私は人事の仕事をしながら、様々な社内の人間関係、上司と部下の関係を見てきました。人事部長という立場に立って、ちょっとだけ皆さんよりも「客観的な目」で見ているとよく分かります。継続的に仕事のパフォーマンスを上げている人たちは、例外なくこうしたビジネス上の人間関係を培っています。

ところで、このチャンピオンは、直属の上司のことだけを指すのでしょうか。その答えは「イエス」でもあり、「ノー」でもあります。直属の上司はチャンピオンの有力な候補である場合が多いのですが、必ずしもそうとは限りません。

ただ指示を出して、仕事をサポートしてくれるだけの存在では、チャンピオンとしての資格が十分とは言えないのです。大切なことは、本当に必要なときにそばにいてくれて、あなたや、あなたのアイディアを上手に「売り込んでくれる」こと。つまり本当に心強い人ということです。

ちょっと想像してみてください。自分の周りに、このような心強いチャンピオンが1人か2人いただけで、どれだけビジネスが有利になることでしょう。極端に言えば、チャンピオンを多く持てば持つほど、ビジネスチャンスは広がり、キャリアアップもスムーズにいくのです。

前にもお話しましたが、会社(組織)というのは、お友達ではなく、仕事仲間が集うところです。、「いい人で使える人」、「嫌いなタイプだけど使える人」、「いい人なんだけど使えない人」、「イヤなヤツで、さらに使えない最低なヤツ」と、自分の周りの人間を冷静に分類するのも必要なことなのです。

その際、そんな彼らが持つ「使える人のネットワーク(人脈)」もリストにしてみるとよいでしょう。それはきっと、仕事のみならず、プライベートにおいても役に立つ日がやってくるハズです。そして、そんなネットワークの要にあなたのチャンピオンがいてくれたら、それこそ鬼に金棒となります。

とにかく、あなたは一人じゃない。きっとどこかであなたを見守り、手を差し伸べてくれる人がいます。さあ、そんなあなたのチャンピオンを今すぐにでも探しにいきましょう!

梅森 浩一

国際人事コンサルタント・作家。ベストセラーとなった「『クビ!』論。」など著書多数。
1958年 生まれ。1982年 青山学院大学経営学部経営学科卒。
 外資系合弁の化学会社の総務・人事を振り出しに、(旧)チェ−ス・マンハッタン銀行東京支店において人材・組織開発担当マネージャー、ケミカル銀行東京支店の日本統轄人事部長を務める。ケミカル銀行東京支店の日本統轄人事部長には35歳で就任。当時の外資系金融機関における「最も若い日本人の人事部長」だった。
 その後、(新)チェ−ス・マンハッタン銀行東京支店で日本統轄人事部長、さらにソシエテ・ジェネラル証券東京支店においてディレクタ−・人事部長を歴任する。
 「残業しない技術」(扶桑社)、「『サラリー』論。」(小学館)など、書き下ろし単行本・新書を精力的に執筆している。同時に、「国際人事マネージメント」の経験を生かしてエグゼグティブ・コンサルタントとしての活動中。

記事検索 オプション

日経BP社の動画ポータルサイト「BPtv」誕生!

SPECIAL

トレンドインフォメーション

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。