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2005/05/25

(藤代 裕之@ガ島通信)

「ブログの終焉」というエントリーをガ島通信でアップしたところ、いくつかの反響を頂きました。もちろん、ブログが本当に終わったのではありません。黎明期が終わり、ユーザーが飛躍的に増え、誰でもブログを知っている普及期が始まろうとしているという意味です。今後、ブログが定着し、社会の中での存在感を増していくのかどうかは、リアルなコミュニケーション・ツールとしてブログが成長するかどうかにかかっていると考えています。

ブロガーとなって人的なネットワークは格段に広がりました。職業や年齢も幅広い、さまざまな人と距離を越えて「つながって」います。私はネットワーカーとしては新参者ですが、彼らは意外なほどリアルな世界で「つながって」いる。そして、ベテランのネットワーカーに会うと「ニフティ時代はね、良質なコミュニティがあったね」「2ちゃんの最初(中期とする人もいる)のころはさー」などという思い出話を聞かされます。

話の展開は、
・サイバーなコミュニティで、言葉遊びや知の共有を行っていた
       ↓
・メジャー化して「分かっていない」人たちが押し寄せてくる
       ↓
・コミュニティが崩壊(場が荒れる)
       ↓
・抜け殻に。そして「昔は良かった…」
となります。

さまざまなサイバーコミュニケーションの「場」がこのような変遷をたどってきたのでしょう。ブログも同様です。私がガ島通信を始めたのは2004年の9月ですが、当時のブログ界はまだ小さなコミュニティで、ブロガー同士は知り合いか、会おうと思えば会える「距離感の近さ」のようなものがありました。

コメント欄への投稿も真剣かつ遊び心があり、感情的な書き散らしや「晒し」が行われそうになれば、別の投稿者が現れて、マナー違反を注意したり、議論を整理したりしていましたが、ノイズの増大とともにそのような「お約束」は消えていきました。

初期ブログ界は、サロン的な雰囲気で行われている仮面舞踏会のようなものです。仮面をつけて別のペルソナで楽しいひと時をすごす「場」です。仮面は、真の匿名ではありません(なので、実名であってもそう変わらない)。ブロガーはダンスをする参加者、コメント欄への書き込みは見物人です。見物人は「ダンス(文章)が下手だ」などと注文をつけますが、楽しい雰囲気を維持するためのギリギリのラインは認識しています。しかし、舞踏会の面白さが徐々に知れ渡り、参加者が増えてくると「お約束」が共有されなくなっていきます。

新しくやってきた人は、「仮面をつけていること」が普通であると認識します。「正体が分からないのだから、面白ければ何をやってもいい」と、参加者同士の非難(炎上)や素顔暴き(晒し)が行われ、だんだんと場が荒れていきます。「要は面白ければいいのだ!」と。

ここで重要なことは、舞踏会への参加者は誰もが自分がつけている仮面がはずされる可能性があるのに、大半の人が忘れているということです。個人的には、インターネットはシステムとその特性から、実名と匿名の区分はあまり意味がないと考えています。実名、匿名、固定ハンドルネーム、匿名ハンドルネーム(捨てハン、@名無しさん)などの分け方をしても、例えばどこかのコメント欄に私ではない人が「藤代裕之」と書き込むかもしれません。藤代裕之を名乗ったブロガーがブログを開設するかもしれません。成りすましは非常に容易です。

ただ、各ユーザーがパソコンなどの端末を使い、回線を通じて情報がやり取りされるというシステムに依存している以上、同一性をチェックすることはできます(同じパソコンから別の人が打っていれば分からないので、同一性と表現しました)。ネットの匿名は技術の進歩とのイタチゴッコです。そして、最終的にはコストの問題に落ち着くと思われます。匿名掲示板の代表的存在の2ちゃんねるも、2003年1月からログをとっており、法律に触れる書き込みをした人が警察に逮捕・補導されるケースが報道されています。

専門家と捜査機関であれば、同一性からリアルに紐付けが可能ですが、一般ユーザーは難しい。ほとんどのユーザーは専門的な技術を持っていませんし、よほど大きな問題でなければ警察やプロバイダーもなかなか動いてくれません。弁護士を雇うのも大変です。現実社会でも、中傷ビラをまいたり、無言電話をしたりする人がいて、警察はなかなか動いてはくれません。

現実もサイバーも被害者にとっては同じようなものですが、サイバーではより簡単に誰もが愉快犯になれます。そして、情報の伝達速度が速く、瞬時に被害が拡大します。愉快犯と被害者の間にコストの不均衡が起きているのが問題なのです。

現状のままでは、ブログのコメント欄への無責任な書き込みは、ブログ人口の増加とともに増え続けていく可能性が高いのではないでしょうか。管理人は、コメントの削除、コメント欄のID化などで対応するでしょうが、やがて追いつかなくなるでしょう。今のところコメント欄だけですが、トラックバック(TB)での「炎上」もあるかもしれません(TBができるのはブログを持っている人のみなので、リアルに結びつく可能性が高く、炎上防止に役立っていますが、簡単にブログを開設できるサイトもあるので効果は限定的だと思う)。

「誰もが仮面を外される(晒される)」ことを担保したシステムの構築という考えもあるでしょう。マナーの悪い人の仮面を剥ぎ取り、逆晒しが行われる恐怖によってノイズを低下させ、ブログ界を維持するものです。しかし、そのようなシステムに依存することは良いのでしょうか?

私は、ブログはオルタナティブなマスメディアに成長する可能性を秘めていると考えています。澄み切った水には魚は住めないし、適度なノイズは議論を活性化させます。うまくノイズを押さえられるのか、ブロガー一人ひとりのリテラシーが試されるのではないでしょうか。新しい「お約束」探しが始まったとも言えます。そして、そのキーワードが「リアル」であるような気がしています。「ブログなんて2ちゃんと同じだ」と思っているネットワーカーにとっては、このような議論は無意味かもしれませんが…。

論点が十分にまとまっているとは言いがたいかもしれません。議論の出発点になればいいと思っていますので、ご意見やTBよろしくお願いいたします。

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藤代 裕之@ガ島通信

元地方紙記者。1973年生まれ。血液型B型。大学卒業後の1996年に新聞社入社。司法・警察担当、支局、地方部、文化部を経験。2005年3月末退社。 新聞社では、事件事故、漁業補償交渉や合併・地方自治などを取材する一方、中高生向け紙面のリニューアルを担当し、「紙」媒体の価値と限界を認識。2004年9月にブログ「ガ島通信」をスタートする。既存メディアの問題点と意識改革、新しいメディアと参加型ジャーナリズムについて議論している。

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